—エピローグ—

神奈川県藤沢市と鎌倉市を結ぶ江ノ島電鉄、通称江ノ電。

通勤、通学をはじめ観光の移動手段としても欠かせないものとなっている。

時は1995年、新月の夜。
天から突き刺さる一筋の閃光とともにターミナルである鎌倉駅が謎の妖魔軍団に占拠された。

彼らは『訶魔苦羅(かまくら)』と名乗り、鎌倉駅を拠点に訶魔苦羅帝国の樹立を宣言。(以下、訶魔苦羅に占拠された鎌倉駅を訶魔苦羅駅と呼称。)
訶魔苦羅駅から放出されるカマクロイド粒子によって鎌倉市民は訶魔苦羅覚醒し、皇帝ヨリトモ卿に忠誠を誓うのであった。

市民だけでなく江ノ電もまた訶魔苦羅の標的になったことはいうまでもない。
訶魔苦羅はタンコロ(江ノ電車両)をカマクロイド粒子で侵食し、訶魔苦羅覚醒させたのだ。
訶魔苦羅空間となった車内は不気味に赤く光り、車掌は正気を失う。
タンコロは暴走列車・丹殺(たんころ)と化し藤沢市民を脅かした。

しかしこのカマクロイド粒子は、訶魔苦羅駅から距離が離れたり、放出から時間が経過することで効力が低下することが訶魔苦羅研究所タロウ博士の研究で明らかになっている。
ただ、繰り返される丹殺の暴走により、藤沢方面へのカマクロイド粒子の濃度が徐々に上昇しているのは確かである。

果たして、丹殺が藤沢駅に到達し、藤沢市が訶魔苦羅皇帝ヨリトモ卿の手に堕ちる日が来るのであろうか!

–序—

「いっけねー遅刻遅刻!」

拓17歳。神奈川県藤沢市から鎌倉興業高校に通っている。

今日も短ラン・ボンタンで愛車のゼファーにまたがり、校則違反フルコースで登校中。

「また渋滞かよ!」

拓の通学路、海沿いを走る国道137号線は慢性的な渋滞道路である。

拓は待つのが嫌いだ。

「しょうがない、今日も高速を使うか」

無論、この海岸沿いに高速道路など通っていない。

拓は踏切内で左折、器用に前輪を江ノ電のレールに乗せてスロットルを回した。

「ひゃっはー!」

バイクであればとりわけレールを走らなくても滞車列の隙間を縫って走ればよさそうなものだが、敢えて江ノ電の線路を走るのだ。

障害物のないレールに乗って潮風を切る、拓はすっかりこの危険と隣り合わせの爽快感の中毒になっていた。

この日も拓はまるでウミネコにでもなった気分で快調に飛ばす。

ファンッ!

後方で警笛が聞こえた。

バックミラーに目を移すと、フレームいっぱいにタンコロ(江ノ電車両)が迫っている。

どれくらい迫っていたかというと、運転手の顔がよく見えるくらいだ。

拓はせっかくなので運転手の顔をよく見てみることにした。

「目がイッている!こいつ、タンコロじゃない!丹殺(たんころ)だ!」

身の危険を感じた拓はさらにスロットルを回す。

しかし丹殺はさらに距離を縮める。

「あれ?このスピードでなんで追いつかれんだよ!」

丹殺はさらに容赦無く拓を煽る。

「やばい!この先は!」

七里ヶ浜駅を過ぎたあたりの急カーブ、ゼファーは曲がりきれずにファラウェイ!

拓とゼファーは宙を舞い、3秒後には仲良く土手に横たわっていた。

空を仰ぎながら拓は訶魔苦羅への報復を誓うのであった。

>>To Be Continued

次話 ぶっとびっFUDISAWA WARS 破

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