ストーリー
「マスター、ごちそうさま」
タクシードライバーは行きつけのコーヒーショップ出る。
「さ、もうひと稼ぎすっか。」
伸びをしながら愛車に目をやると、神聖なボンネットに腰を落とす怪しげな男女二人組が待っていた。
「あんたがこのタクシーの運転手?」
ジャーン(ギター)
女が話しかけてきた。ギター男はしゃべらない。
「あぁ、そうだが。」
「あたし達を港町のクラブヤスダックまで乗せていきなさい。
財布を落としてしまって困ってたところなの。」
ジャーン(ギター)
男はしゃべらない。
どうやら無銭乗車をするつもりらしい。
「仕事中だ。どいてくれ。第一、港町までは200マイルはあるぞ。」
「だから仕事を依頼してるんじゃない。」
ジャーン(ギター)
「仕事って、あんたら金持ってないんだろ?
こちとらボランティアじゃないんだ。」
「あっそ。手荒なマネはしたくないのよね。」
ジャーン(ギター)
女は持っていたマシンガンをタクシードライバーに向ける。
男はしゃべらない。
「わ、分かった。手荒なマネだけはしないでく・・ん?なんだそれ、よく見ると拡声器?
なんだそうか、手荒なマネとやらをしてみろよ!」
自分に向けられているものが銃口ではなく、拡声器のスピーカーであることに気付くと、タクシードライバーは急に強気になる。
ダダダダダッ!
スピーカーの先から飛んだ銃弾はアスファルトに弾かれた。
「結局マシンガンかよ!ややこしいな!」
ファーン!(ハウリング)
「かぁくぅせぇいぃきぃにぃもぉなぁるぅわぁ。(拡声器にもなるわ。)」
女は拡声した。
「だからややこしいわ!」
ジャーン(ギター)
「ちなみにこいつはただのギターだ」
やっとしゃべった。
「あんたは黙ってろ!」
マシンガンのようにツッこむ。
「わかったよ。もう乗れよ。今時タクシージャックなんて流行んねぇぞ。」
タクシードライバーは観念した。
「あんた、ステージはそれで歌うのかい?」
二人組が後部シートに落ち着くのを確認するとタクシードライバーは話しかけた。
「そうよ。」
「間違っても客にぶっぱなすなよ!」
タクシードライバーは二人を乗せ、コーヒーショップの駐車場をあとにした。
数十分程走ると、タクシードライバーはバックミラーを気にしだした。
明らかに黒塗りのジャガーに追走されている。
「さっきから後ろの車ついてきてるようだが・・」
それを聞くと女は慎重に後方を確認する。
「ただのファンよ。」
女の顔を確認したのか、次の瞬間ジャガーは急加速し反対車線にはみ出しながらタクシーに並走、横から体当たりしてきた!
「ファンにしては熱狂的すぎやしないか?!」
ダダダダダッ!
女はためらうことなくジャガーの運転席に向けてマシンガンをぶっぱなした!
ジャガーは進行方向を逸れ、歩道に乗り上げ活動停止。
「おいおい、ファンは大切にしろよ!
客にはぶっぱなすなって言ったところだろ!
あとせめて窓はあけてくれ。」
「壊した窓は弁償するわ。無事にクラブに辿り着いたらマネージャーに請求してちょうだい。」
「運賃もな!」
三人の旅は始まったばかり。
女は無事にクラブヤスダックに辿り着きステージに立つことができるだろうか。
コンセプト
こんにちは。ヤスダックレコード店長です。
ストーリーをロードムービー調にしてみました。
この作品もオシャレ帝国ピチカートファイブのミュージックビデオから着想を頂いて制作しましたが、無意識に林檎ちゃんと浮雲さんのイメージに寄っていった気がします。作品というのは、憧れやリスペクトがにじみ出てしまうものなのですね。
ショートアニメ
イラストが少しだけ動きます。Youtube#short
ジャケダケレコード
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