ストーリー
今はむかし、神と人とがまだ同じ世界で暮らしていた時代。
「姫さま~もう出てきてくだされ~」
「もう絶対に出ないんだから!」
彼女はアマテラス。
太陽を司る彼女が岩戸にこもってしまったために、世界はもう一週間も闇の中。彼女の身によほどの事があったのだろう。
老仕(従者の頭)は終わりの見えない説得を続ける。
「姫さま、ハーゲンダッツ20個買ってきましたぞ!
さ、いつまでもそんなところに閉じこもってないで、外に出てお好きなだけお召し上がり下さいませ!侍女もこのとおり謝っております!」
「姫さまのハーゲンダッツとはつゆ知らず、どうかお許しくださいましーっ!」
どうやら、楽しみにとっておいた期間限定のハーゲンダッツを侍女に食べられてしまったらしい。
確かによほどの事だ。
姫にとっては、だが。
「数の問題じゃないわ!私が食べたいのは期間限定プッチンプリン味よ!
もうどこにも売ってないわ!」
甘×甘。
もはや舌にのせたとて、その甘さがどちらの甘さなのか判別不可能だ。
甘ければいいのか、甘いは正義か、甘テラスよ。
「何か姫さまを外に出す良い案はないか・・・」
すると、ひとりの従者が何やら格調高い木箱を差し出した。
「おお、これは!まだ残っておったとは!でかした!」
箱の中を確認した老仕は意気揚々と説得を再開する。
「姫さま!今、ハーゲンダッツ数量限定ゴディバコラボフレーバー『銀座三ツ星パティシエ厳選カカオをふんだんに使用したチョコチップまみれ』を買って参りました!さ、早くこちらへ出て来てお召し上がりくださいませ!
ささっ、溶けないうちに!」
「・・・・。」
数秒、迷った感じの間があって、
「見くびらないで!私をそんなブランド品にキャっキャするOLと一緒にしないで!私の厳格なハーゲン道には絶対に曲げられない鋼の信念が・・」
ガシャーン!!
「何者じゃ!!」
老仕の叫び声からにじみ出る恐怖と絶望。
神殿に盗賊が押し寄せたのだった。
盗賊の一人が木箱に入ったハーゲンダッツに手を伸ばす。
「そ、それだけはダメじゃ!姫さまのゴディバ限定コラボダッツが!!」
その時だった。岩戸の重い扉がゆっくりと開いた。
(ショワン ショワン ショワン ショワン・・・)
「ワラワノ神聖ナルハーゲンダッツヲ簒奪(さんだつ)セントスル愚カシキ者ドモヨ命ヲ差シ出ス覚悟ハデキテオロウナ」
怒りのオーラをショワンショワンさせた姫が姿を現した。
「今じゃ、姫さまを引っぱり出せーぃ!!」
老仕の号令で盗賊役の従者も含め、みなで姫を岩戸から引きずりだした。
「きゃっ!」
神といえども年頃の女子。
姫は無事に引っぱりだされ、世界は再び光に満たされたとさ。
現在も続く御乳氷菓祭はこの伝説が起源とされており、千年以上にわたりハーゲンダッツが奉納されている。
諸説ありますけれども。