メルトちゃん (2020)

ストーリー

メルトちゃんは今夜も静かに溶けていた。

気持ちが波立つと髪の毛の色になって流れ出る不思議な体質。
人前では気を張って色の流出を抑えているが、家に帰って一息つくとその抑制は解き放たれ、今日一日の出来事が次々と鮮やかな色彩となってて彼女の髪を染めていく。
色たちは複雑で幻想的な模様を描きながら毛先に辿り着き、しばらく留まって徐々に消えてゆく。
記憶が新しい事、心への影響が大きい事ほど鮮やかな色となって表れる。
楽しい出来事も、辛い出来事も。
それらが氾濫しているうちは、メルトちゃんに本当の休息は訪れない。

今夜も一日に見たこと、聞いたこと、感じたことがリフレインのように反芻され、鮮やかな色となって流れ出す。
そして鮮やかな色たちに感情が引っぱられ、また新たな色を生む。
まるで終わりのない螺旋階段。

しかしメルトちゃんは知っている。
この色たちに飲み込まれてはいけないことを。

彼女はそっと目を閉じ、深く息を吸い込む。
そして流れ出る色たちを冷静に眺め、自分の感情と切り離す。

深呼吸のたびに色たちは次第に褪せ、髪束は透明感を増していく。
やがて色の流れは静まり、メルトちゃんの髪は美しく深い黒に還ってゆく。
こうしてようやくメルトちゃんに本当の安らぎが訪れるのだった。

おやすみ、メルトちゃん。

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