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(ミルねえさん風で)
わたしはマダムローズ。
バー『ミスターシスター』のママよぉ。
みんなはわたしのこと、ローズママって呼ぶわぁ。
たまに小学生がUMAとか、使徒とか、ラスボスって叫んで逃げてくけど、基本ローズママでいいわぁ。
カランカラーン♪
あらぁ、今夜もまた、迷える子羊ちゃんがご来店ねぇ。
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ローズ) あら、大魔王いらっしゃい。
大魔王) ちょっとローズママ聞いてよ。
新人の五部林(ごぶばやし/通称ゴブリン)がまたミスやらかしてさ。
ローズ) まあ、お気の毒ねぇ。
大魔王) 何回言っても同じミスして。まったく余(ヨ)をバカにしとる!
「仕事もろくにできないのに肉ばっか食いやがって!お前は狂犬三兄弟のひとりかっ!」って言ってやったよ。
ローズ) あら、ちょっと五部林くん、可愛そうじゃない?
大魔王) いいんだよ。アイツはそれくらい言っても効かないんだ。
ローズ) でもそれ、一体誰のために怒ったの?
大魔王) 誰ってそりゃ五部林。
ローズ) いい?「怒る」ってのはね、二種類あって、他人のために怒るのと、自分のために怒るの。
大魔王) ほぉ。詳しく聞かせてくれるかい。
ローズ) ホントに他人のためだったら、どんどん怒っていいのよぉ。
大魔王) じゃぁ、今回は余が怒ったのは正当だな。
ローズ) いいえ、残念ながら自分のためねぇ。あなたのエゴで五部林くんを傷つけただけ。
大魔王) え?なんで?
ローズ) 怒る原因を突き詰めると、だいたい自分のためね。九分九厘、九毛。「自分の存在をないがしろにされた」とか「プライドを傷つけられた」とか「恥をかかされた」とか最悪なのが「イライラして相手にあたった」とかね。今回は、自分の存在をないがしろにされて怒ったケースねぇ。
大魔王) いや、そんなことないよ!
ローズ) だって、「余をバカにしとる」って言ってたじゃない。
大魔王) あ、ホントだ。
ローズ) 逆に他人のために怒るって、とっても難しいことで、例えば、命を絶とうとしている人を叱ったり、危険な遊びをしてる子供を叱ったりとか。
大魔王) 子供のしつけは特に注意が必要かもね。明らかに自分がイライラして子供にあたってる親、街中でよく見かけるよ。
ローズ) あたし、子供いないから分かんないけど、相応のストレスはあるんでしょうね。「また自分の為に怒っちゃった」って気付くだけでも違うかも。怒りがこみあげてきた時、怒鳴る前に少し考えるべきね。一体だれのために怒ってるのか。
大魔王) で、たいてい自分の為に怒ってることに気づくわけだ。
ローズ) そう。で、相手がどうでもいい人間だったら、怒らずに放っておけばいいのよ。そういう人はあなたが手を下さなくても、自然にはじかれていくはずだから。
でも五部林くんはそうじゃないでしょ?
大魔王) え・・・。
がたっ(大魔王急に立ち上がる)
大魔王) 五部林ごめんよーっ!!
カランカラーン♪
ローズ) ちょっとー!一杯くらいなんか飲んできなさいよっ!(←自分の店のために怒ってる)