FLASH DANCE (2021)

ストーリー

「店員さん、このギターおもしろいデザインですね。」
「あ、これね。モーヤス・ホッテイトーのギター。」
「モーヤス・・誰ですかそれ?」
「君はまだ若いから知らないかもね。ちょっと昔話に付き合ってくれるかい?」
「はい、聞かせて下さい!」
「君が生まれる30年も前のはなし・・・」

ロックスター、モーヤス・ホッテイトーにも下積み時代があった。
駆け出しのモーヤスは、とあるミュージカル劇場に雇われ、ダンスオーディションのバックバンドでギターを担当していた。
カセットテープを流して踊らせればいいものを、この劇場は生きた音にシンクロする能力を見たいとかで、生バンドを採用している。
まったく酔狂な話だ。

その日もモーヤスは何十回と同じ課題曲を演奏し、脳も指も疲弊していた。
「あと一人。。」
モーヤスは自分の頬を叩き気持ちを入れ直す。

「マイ ネーム イズ マイ・ミキイ。」

最後の受験者がフロアに立っていた。
黒髪が美しい華奢な少女。アジア人のようだ。
小柄ではあったが、すっと伸びた背筋と迷いのない真っすぐな瞳。
彼女の覚悟と気合がオーディション会場を満たす。
モーヤスの好みのタイプではあったが、えこひいきはしない。
というか、彼にはえこひいきをする体力が残っていない。
そして審査が始まった。
「固い!」
モーヤスは演奏しながら眉をひそめた。
覚悟と気合が裏目に出たか、ダンス素人のモーヤスの目にもマイの動きがマリオネットのように固いのが分かった。表情もさっきとは打って変わって不安げだ。
次の瞬間、

ドサッ!!

マイはフロアに倒れ込んだ。
着地で足がもつれ、転倒してしまったようだ。

「オーディションに受かったらデートにでも誘おうと思ったが、彼女を見るのも今日っきりだな。」
モーヤスは少し残念に思った。

マイはゆっくり顔を上げる。
「ん?」
モーヤスはマイの変化に気付いた。
「この目はまさか!」
眼球が落ちるのではないかというくらい瞼を開き、黒目を中央に寄せる。
「KABUKIだ!!!」
モーヤスは子供の頃、図書館の百科事典で見た歌舞伎の写真を思い出した。
歌舞伎舞踊とミュージカルが融合した、力強く、そしてしなやかなマイのダンス。
それと呼応するかのようにモーヤスの指が、今までプレイしたことのないサウンドをかき鳴らす。
「何だ、この感覚は!!」

マイが踊りきると、審査員も他のバンドメンバーもポカンとしていた。

数日後。
オーディションの最終審査会場にマイの姿はなかった。
あれだけのパフォーマンスができても、おそらく前半の失敗が足を引っ張ったのだろう。
本番勝負のショービジネスでは仕方のない事である。
暴走した自分のギターも少なからず影響してしまったのではないかとモーヤスは反省をした。
しかし、あの時彼女と紡いだパッションが忘れられない。
そしてモーヤスはあの体験をある一曲に刻み込んだ。
それが彼のデビュー作にして世界セールス1000万枚を記録した『FLASH DANCE』。

「後にモーヤスはスターになるきっかけを与えてくれたマイに敬意を表し、このギターを作ったというわけなんだ。」
「え!すごい!何でそんなすごいギターがここにあるんですか?!」
「・・・レプリカですけど。」

あとがき

こんにちは。ヤスダックレコード店長です。
女性をギターに見立てるアイディアは、しばしば見かけていて、カッコいいなー、自分も描いてみたいなーと思って描きました。
制作中、映画『FLASH DANCE』のオーディションのシーンが頭から離れず、こんな絵になりました。

モーヤス・ホッテイトーとマイ・ミキイ。
この世界では会話をすることもなくすれ違ってしまいましたが、別の世界では出逢っているかもしれませんね。

ちょっと動くアニメ >> Youtube#short

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